カット・コアはその形状及び薄帯の張り合わせ構造からして加熱すれば必ず変形し常温に戻しても元の形状に復帰するとは限りません。従ってカット・コアトランスのコアの組立はカット面を接着する事が原則とされていますが、時として面の接着不備の為に、トランスの唸り、振動の発生(電磁吸引力による振動騒音、磁歪によるものではない)、励磁電流の増加をきたし不適合品とすることがあります。これを防止するためには下記のことに留意しなければなりません。
1)接着剤の選定、取り扱い
- 二液性接着剤であること。調合割合を厳密にし、練り合わせを充分行うこと。
(嫌気性接着剤は面全体の確実な接着が成されるとは言い難い) - 常温硬化形(30℃以下で硬化することが望ましい)であること。
- 面に塗布するに支障を来さない粘度であること。(可使時間の延長、塗布し易さの為に、溶剤にて希釈する場合は必要最小限とし、溶剤は沸点の低い物を選ぶこと)
- 接着剤に管理条件を厳守すること。
2)コアに対する留意点
- カット面はアセトン等有機溶剤にて刷毛洗浄し清浄にしておくこと。
- カット面にバリ等があれば除去しておくこと。
- 接着剤塗布時のコア温度は30℃近辺が望ましい。
3)組立
- 接着剤はカット面双方に万遍なく塗布して下さい。
接着剤の塗布厚は厚すぎても薄すぎてもいけません。励磁電流測定で掴む。 - コイルに挿入時、異物が入らないようにして下さい。
- コア挿入後、接着剤が万遍なく両面に行き渡るよう摺り合わせて下さい。
- バンドの材質は非磁性のものが望ましい。(SUS-304、403)
- バンド締め付けは弾性限界を越えない範囲とすること。コア締め付け強度はコア断面1㎠当たり10〜30kgとする。
尚、コアの温度変化による変形をバンドで止める事はできません。 - 2本掛けの場合は、バランス良く締め付け、片寄りの無いようにすること。
- バンドの締め付け力点は両肩の中央部として下さい。
- バンドをコアに接着することでバンド装着による騒音増加(磁歪、電磁吸引力による加振)を抑制できます。
- 組立後のコア温度は接着剤がゲル化するまで30℃近辺に保持して下さい。
- 突き合わせ面の接着剤が完全に硬化するまで、衝撃及び、50℃を越える熱を加えないで下さい。又この間ワニス等の含浸を行わないで下さい。
面接着の為の接着剤が硬化する前、即ち「面が接着される前に加熱する」とコアが変形しカット面にギャップを作り、接着剤の移動やワニスの侵入により、降温後も形状復元が出来ず永久ギャップとなります。
尚、これらの対策は電磁吸引力による振動、即ちカット面に対するものであり、もし磁歪による騒音まで問題視しなければならない程厳しい騒音条件の場合は設計磁束密度を低くしなければなりません。